2019年8月29日木曜日

南アルプス 光岳と聖岳

 みなさまこんにちは,よしだです。

 前々回,南アルプスの光岳 (てかりだけ)・聖岳 (ひじりだけ) の登山口は,椋鳩十作の童話「月の輪ぐま」の舞台だった,という話を書きましたので,今回はその山の上の話を書きたいと思います。

 ところで,光岳も聖岳も,ちょっと面白い名前だと思いませんか。

 前者は「ひかりだけ」ではなくて「てかりだけ」。ふつうはこうは読みませんね。
 この山の南側には,大きな岩が二つそびえ立っています。石灰岩でできているので全体的に白っぽいのですが,これが夕日を浴びるとテカる→光岩(てかりいわ)と名前がついて,その光岩があるから山の名前も光岳(てかりだけ)となったそうです。石灰岩はサンゴ礁由来ですから,チャートの赤い石と同じく,これもまた南アルプスが海底由来の地質であることを示しています。
写真奥側はかなり高度感のある断崖絶壁です
 
光岩からの景色です。
となりにもう一つ石灰岩の巨岩があります。
 
 光岳でもう一つ忘れてならないのが,ハイマツの南限と言われていることです。
 ハイマツというのは,本州中部ではいわゆる「森林限界」と呼ばれる,大きな木が育たなくなる標高の上部(高山帯)に広く生育するマツで,大量の積雪や強い風の影響で地を這うように成長することから,その名前があります。つまり高山帯の代表的な植物なのですが,これより南に生育しているところはないのだそうです(諸説ありますが・・・)。今回その近くまで行ってみました。
道がわかりづらかったので,
本当の南限ではないですが,
南限にまぁまぁ近いあたりのハイマツです。

 もう一つの聖岳。とても神聖な感じの名前ですが,実際は「へずる」という言葉のなまりで,この山の一つの谷が「へずり沢」だったのが「ひじり沢」に転化して,その沢を登り切ったところにある山が「ひじり岳」になったのだとか。ネーミングはおもしろいですね。
 でも山の形そのものが端正で,方角によってはきれいなピラミッド状に見えるので,神聖な由来があってもおかしくないとさえ思えてしまいます。実際名古屋周辺からも,きれいな三角形の山として見ることができます。
 ただ,ここを登るのはちょっと大変。迫ってくるような斜面につけられた石くずの道を,右へ左へとつづら折りに少しずつ標高を稼いでいくのです。最寄りの山小屋からでも標高差は700 m 以上!
壁のような斜面を登っていきます(汗)
 
 登りきると,ごほうびのようにすばらしい景色が広がっていました。この写真にはないですが,富士山も霞みながらも見ることができました。登った甲斐があるというものです!
さわやかな山頂の景色です

 南アルプスは北アルプスに比べて温暖なだけに,お花畑の最盛期はすでに終わっていましたが,まだところどころに花が咲き,鳥のホシガラスが飛び交い,天候にも恵まれて,自然のすばらしさを今回も感じることができました。
  

2019年8月26日月曜日

八竜湿地で調査

 みなさまこんにちは,よしだです。

 猛暑が一段落した今日,私は八竜湿地で定例の水質調査をしてきました。これは季節ごと,年4回を目途に行っているものですが,前回調査をしたのは2月,5月が多忙のためできなかったので,半年ぶりになってしまいました。
地下水を採水している様子です
 
 全部で19か所の設定ポイントを回るのですが,真夏なので草や木が茂って道がわかりづらいところもありました。そして暑さ! 猛暑の一歩手前とはいえ,汗はダラダラでタオルが欠かせません。そして熱中症対策で水も! とにかく早く終わらせたくて,つぼみが膨らんできたシラタマホシクサの写真を撮り忘れてしまいました(苦笑)。でも2時間半くらいで完了となったのでまずまずでしょう。

 今週中盤から再び猛暑となるそうですが,野外調査をする側としては,早く涼しくなってほしいものです。
  

2019年8月21日水曜日

童話「月の輪ぐま」の舞台

 みなさまこんにちは,よしだです。
 
 私は先日,南アルプスの光岳(てかりだけ)・聖岳(ひじりだけ)に山登りに行ってきました。その登山の拠点は長野県飯田市(かつての南信濃村)の遠山郷という山深い場所で,そこを流れる遠山川をさかのぼって登山口となります。
 
 この「遠山川」という名前を私が知ったのは,小学生の時に国語の教科書に出てきた,椋鳩十が書いた童話「月の輪ぐま」でした。主人公が猟師とともに赤石山脈(南アルプス)の麓の遠山川をさかのぼり,子ぐまをつかまえようとする話がなぜか印象に残り,「赤石山脈」や「遠山川」というところはクマが出るような山深いところなんだ,とずっと思っていました。
 
 その遠山川,かつては林業で栄え,上流深くまで木材を運搬する森林鉄道が敷かれていました。すでに廃線になって50年近く経っていますが,現在もその痕跡を見ることができました。
かつて列車が通っていたトンネルです
 
 線路跡はそのまま登山道になっていて,下を見ると遠山川が深い谷を刻みながら流れていました。左上から右上へUの字を描く複雑な流れをしています。
 
 幸いにしてツキノワグマに出会うことはありませんでしたが,クマが本当にどこかにいそうな深い山でした。
 
 ところで,いまは南アルプスというの呼び方がメジャーですが,正式な山脈名は「赤石山脈」ですね。これは赤石岳という山の名前によるものですが,なぜ赤石岳という名前がついたのでしょうか? そのヒントが下の写真です。
 
 これもまた,遠山川沿いで撮った写真ですが,画面上3/4の土が赤くなっています。この赤い土は「チャート」と呼ばれる石で,放散虫という海のプランクトンの死骸が海底に堆積し,地中深くで圧縮されて岩石となり,プレートとともに日本まで運ばれて隆起したのだそうです。赤石山脈ではよく見られる岩石で,これが「赤石」の由来となりました。
 赤石山脈の隆起はいまも続いていて,高い山と深い谷という複雑な地形を形成し,結果として多様な生態系を編み出しているのです。
 

2019年8月10日土曜日

2019年度第2回オープンキャンパス

 みなさまこんにちは,よしだです。
 
 今日は今年度第2回目のオープンキャンパスです。今回もKSCはブースを出させていただき,里山の紹介と,先日袋詰めした竹炭の配布を行いました。
 
 今回私は仕事の都合で準備には行けませんでしたが,学生さんだけでちゃんとセッティングしてくれました。
 
 そして高校生のみなさんやその親御さんが通りかかったときにお声がけして,竹炭を配布しました。 
 
 
 オープンキャンパス開催中にこのブログを書いているのですが,多くの方に竹炭を持って行っていただきました。中には「2年前ももらいました。重宝してます。」と言ってくださった方も! とてもうれしかったです! このキャンパスの自然の豊かさを通して,金城を選んでいただけたらいいですね。
 

2019年8月7日水曜日

竹炭袋詰めと流しそうめん

 みなさまこんにちは,よしだです。
 
 名古屋は猛暑日が続いていますが,そんな中,週末のオープンキャンパスに向けての竹炭袋詰めと,流しそうめんをしました。
 
 まずは竹炭の袋詰め。前回部室でやって大後悔(汗)だったので,またいつものW1棟西側出口で行いました。ホコリの問題は解決しましたが,暑い~。でも不思議なことに蚊に刺されず。暑すぎると蚊が飛ばない,と聞いたことがありますが,本当なのかも?
 
 竹炭袋詰めは,人手が足りず時間がかかりすぎて,流しそうめんのスタートが30分も遅れてしまいました。いわざき先生がそうめんを湯がいてきてくださって本当に助かりました。
みなさん楽しんでいただけたでしょうか
 
 でもめんつゆがすぐに底をついて,私は自転車で買出しに・・・
 バタバタで申し訳なかったです。
 
 今回はちょうど3限に試験がある学生さんもいたので,15時から第二部を開催しました。試験が終わって,すっきりした気分で楽しめたことでしょう。
グミキャンディがコロコロ流れてます!
 
 ひとまずKSCの夏のイベントが終わりましたが,週末のオープンキャンパスがんばります!
 

2019年8月4日日曜日

鳳凰三山へ山登り

 みなさまこんにちは,よしだです。
 
 大学は前期の授業が一通り終わりました。授業で出した課題の採点,実験,会議や打合せなどもあるので,教員はすぐに夏休みとはならないですが(苦笑),ようやく山登りに行けるようになりました。
 
 今回選んだのは,山梨県にある鳳凰三山(ほうおうさんざん)です。南アルプスの北部に位置し,地蔵岳・観音岳・薬師岳という標高2800 m前後の山が3つ連なっています。地蔵岳には巨大な岩峰があり,山のふもとからお地蔵さんのようにも見えるため,古くから信仰の山となっています。
 
 今回,登山口から沢沿いのルートを登り,一泊して3つの山を縦走し,森の中の尾根道を下りました。沢沿いのルートは滝がいくつもあり,きつい登りが続く中でさわやかな気分になれます。
落差がとても大きな滝です
 
 気温がとても高いからか,ガス(霧)が朝早くから上がってきました。地蔵岳の巨大な岩峰が少し霞んでいます。
ちょっと幻想的な景色になりました 
 
 今回一度も富士山を見ることはできませんでしたが,霧がかかって日光がさえぎられ,暑さを感じることなく山から山へと気持ちのよい稜線歩きができました。 
花崗岩の白い尾根をたどります 
 
 霧が出たことで展望はいま一つでしたが,高山植物の花を見るにはちょうど良い時期で,いろいろな花が楽しめました。 まずはヨツバシオガマです。一つ一つの花は鳥のくちばしのよう。紫色もきれいです。

 
 写真だとわかりづらいですが,これはとても小さな花でした。ヒナコゴメグサのようです。小さくても色づかいがかわいらしいですね。
 
  ピンク色のきれいなこの花はタカネビランジです。南アルプスの固有種で,ちょうど満開の時期に当たり,たくさんの花を見ることができました。個体によって花の色合いが異なり,中には真っ白なものも。ちなみに「ビランジ」とは変わった名前ですが,日本語なのに語源がわからないのだとか。
 
 こちらは同じく「タカネ」の名を冠するタカネグンナイフウロです。「タカネ」は鳳凰三山の隣に位置する高嶺という山の名前から付けられたという説もあるようです。その名の通りフウロソウ属の植物で,いかにもフウロソウの仲間らしい花の形をしています。
 
 最後に,鳳凰三山で出会った動物を紹介しましょう。オコジョです。一休みしていたら目の前に現れてびっくり!
 オコジョはイタチと同じ仲間の動物ですが,大きさはとても小さく20 cm くらい。ネズミくらいの大きさと言えばいいでしょうか。肉食動物なので性格は獰猛なところもあるようですが,見た目は実にかわいい! そして動きがとてもすばしっこくて,走り回って遊んでいるかのようでした。
 このオコジョ,あまり人を怖がらないのか,割と長く近くにいてくれました。僕も嬉しくてカメラを向けるのですが,動きが早過ぎてついていけない・・・40枚以上も写真を撮ったのに,まともに撮れたのはほんの5枚くらいでした(苦笑)。もうちょっといいカメラだったらよかったのかな?
 
  アルプスでオコジョを見たのは4回目。めったに会えない動物に会えて本当によかったです! 久しぶりの山登りで体がまだ慣れていなかったのか,つらい登りでしたが,このような花や動物との出会いがあると,自然って本当にいいなぁ,と思ってしまいます。