2018年4月13日金曜日

ハナノキ自生地の見学

 みなさまこんにちは,よしだです。

 少し前のことになりますが,希少植物のハナノキの見学をさせていただく機会がありました。ハナノキはマメナシやシデコブシと同じく東海地方の湧水湿地に見られる植物で,どちらかというとやや標高の高い地域に分布しています。この時期,赤い花をたくさん咲かせるので「ハナノキ」の名がつきました。

 そのハナノキは,もともと個体数が多くないうえ,開発などで伐採されたり生育地が減少したりしてさらに個体数が減り,絶滅危惧種II類に指定されています。

 先日東谷山湿地のボーリング調査の中間発表会でのご縁で,長野県飯田市周辺のハナノキの保全をされている方に生育地を案内していただけることになり,小野先生とともに「お花見」となりました。

 まず最初に見学したのは,飯田市の「杵原学校」という,かつて中学校だった場所です。木造校舎が大変良い雰囲気を醸し出していて,映画のロケ地にもなったことがあるそうです。
 
 その校庭に立っているのがハナノキの大木。案内していただいた方や小野先生が左下に写っていますが,どれくらい大きいかよくわかると思います。日当たりなどの条件が悪いと成長がとても遅く,条件が良くなると急に成長が早くなるとのことでした。東海地方の湧水湿地に多く見られる植物群を「東海丘陵要素植物群」といって,ハナノキもその一つなのですが,ここまで高木化するのはハナノキだけでしょう。
 
 ハナノキは雌雄異株で,花で雌雄を識別できます。こちらは雌花(雌株)です。
 
 こちらが雄花(雄株)で,雄しべがいつくもあるのがわかります。

 葉を展開させる前に花が咲くので,赤い花がよく目立ちますね。 
 
 他にも,若い木は樹皮がつるつるで,その樹皮にひび割れができ始めたころに初めて花が咲くとか,実には翼がついていてひらひら飛ぶのですが,翼の形に遺伝的多様性があるとか,いろいろなことを教えていただきました。

 この日は何ヶ所かの生育地を回ったのですが,ハナノキ以外にもいくつもの花を見ることができました。これはツノハシバミで,枝の先端の赤いのが雌花,だらんとぶら下がったのが雄花です。
 
 こちらはアブラチャンの花。私は学生時代この木の名前を聞いたことがありましたが,実物を見るのは初めて。直径1cmくらいのポンポンのようなかわいらしい花です。
 
 花ではありませんが,地面からにょきにょき新芽が出ていました。これはミカワバイケイソウ。高山植物のコバイケイソウと同じ仲間ですが,東海地方の湧水湿地に適応して分化したもののようです。ふさふさの花が特徴的です。バイケイソウの仲間は毒を持っていて,新芽は山菜のオオバギボウシなどと似ているため中毒事故がよく発生するので注意が必要です。

 ほぼ一日にわたって見学をさせていただいたのですが,昼間は気温が上がって暑いくらいでした。 天気が良く,山なみの向こうには冠雪の南アルプスを望むことができました。白い山なみと花々の組み合わせは,いかにも信州らしい景色で目を楽しませてくれました。今回案内をしてくださった方々に感謝いたします。
赤石岳(左)から聖岳(右)まで見えています
 

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