私は先日,南アルプスの光岳(てかりだけ)・聖岳(ひじりだけ)に山登りに行ってきました。その登山の拠点は長野県飯田市(かつての南信濃村)の遠山郷という山深い場所で,そこを流れる遠山川をさかのぼって登山口となります。
この「遠山川」という名前を私が知ったのは,小学生の時に国語の教科書に出てきた,椋鳩十が書いた童話「月の輪ぐま」でした。主人公が猟師とともに赤石山脈(南アルプス)の麓の遠山川をさかのぼり,子ぐまをつかまえようとする話がなぜか印象に残り,「赤石山脈」や「遠山川」というところはクマが出るような山深いところなんだ,とずっと思っていました。
その遠山川,かつては林業で栄え,上流深くまで木材を運搬する森林鉄道が敷かれていました。すでに廃線になって50年近く経っていますが,現在もその痕跡を見ることができました。
かつて列車が通っていたトンネルです
線路跡はそのまま登山道になっていて,下を見ると遠山川が深い谷を刻みながら流れていました。左上から右上へUの字を描く複雑な流れをしています。
幸いにしてツキノワグマに出会うことはありませんでしたが,クマが本当にどこかにいそうな深い山でした。
ところで,いまは南アルプスというの呼び方がメジャーですが,正式な山脈名は「赤石山脈」ですね。これは赤石岳という山の名前によるものですが,なぜ赤石岳という名前がついたのでしょうか? そのヒントが下の写真です。
これもまた,遠山川沿いで撮った写真ですが,画面上3/4の土が赤くなっています。この赤い土は「チャート」と呼ばれる石で,放散虫という海のプランクトンの死骸が海底に堆積し,地中深くで圧縮されて岩石となり,プレートとともに日本まで運ばれて隆起したのだそうです。赤石山脈ではよく見られる岩石で,これが「赤石」の由来となりました。
赤石山脈の隆起はいまも続いていて,高い山と深い谷という複雑な地形を形成し,結果として多様な生態系を編み出しているのです。
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