みなさまこんにちは,よしだです。
私は9/6(土曜日)に開催された日本湿地学会第17回大会 北海道・大沼大会に出席してきました。翌7日(日曜日)に開催されたエクスカーションの状況も含めて紹介します。
日本湿地学会はその名の通り湿地に関する研究者が集う学会で,ここで言う湿地とは,ラムサール条約で定義された湿地(陸の上の湿地だけでなく湖沼や干潟なども含む広い定義)となります。今回北海道の函館の少し北,七飯(ななえ)町にある大沼公園で行われたのも,大沼という湖沼で顕在化している課題を学会員で共有・理解するという意図もあったのでしょう。
さて,学会は6日の朝から開催なので,前日に名古屋を出発して北海道入りしました。私は今回新幹線で新函館北斗駅まで行きましたが,むかしむかし青函連絡船に乗った経験がある身としては,名古屋から「たったの6時間ほど」で列車で北海道に行けるなんて,時代も変わったものだと思います。以下写真を使って説明していきます。
会場の最寄り駅はJR函館本線大沼公園駅で,小さな無人駅でした。そこから道路を歩いて会場の大沼国際セミナーハウスに向かいます。道路からは大沼の向こうに駒ヶ岳を見ることができました。森の向こうに少しだけとがった頭を出しているのが駒ヶ岳です。
実は私,大沼は列車の車窓から何度も見たことがあるのですが,どういう状況になっているのかは全く知りませんでした。水面を見て初めて知ったのですが,アオコが浮いています。つまり富栄養化が進んでいるということです。大沼は観光地としてよく知られているので,勝手に「きれいな水の湖」と思い込んでいただけに,これはちょっとショックでした。このことについては,この日の学会のシンポジウムでも,翌日のエクスカーションでも詳しくお話を聞くことができました。
学会会場の大沼国際セミナーハウスです。ここに100人近い関係者が集まりました。
学会発表は午前中が口頭発表,午後はポスター発表・シンポジウム・懇親会と続きました。発表の様子は写真を撮っていないので紹介できませんが,私は今回ポスター発表をしました。コアタイムが1時間以上あったものの,次から次への人が来て説明をしていたので,他の人のポスターを1枚も説明を聞く間もなく時間切れとなってしまいました。その点はちょっと残念でしたが,湿地を切り口にさまざまな方向から光が当てられて研究が行われていることがよくわかりました。シンポジウムは「北海道の湖沼」というタイトルで,北海道内各地の湖沼で研究している方々がそれぞれの湖沼の特徴と課題について紹介し,意見交換がされました。
それが終わると懇親会になりました。そこで出た料理の一つがこれです。題して「湿地の未来」。シェフの北海道らしさの創意工夫とユーモアがあふれる一品です。これ一枚が釧路湿原を表し,蛇行する魚の揚げ物(フリット)が湿原の中を流れる川を表しています。ちなみにこの魚,イトウという珍しい(料理にはまず出てこない)魚で,私は初めて食べましたがたぶん何にしてもおいしく食べられそうな癖のない味と言えばいいでしょうか。写真ではわかりにくいですが,隅の方には鹿肉もあります。湿地にエゾシカがいることを表現しています。そして何か丸いものが目につきますが,これはメガソーラーを表しているとのこと。つい最近,釧路湿原の周辺でメガソーラーの建設が進んで問題視されていることがクローズアップされましたが,そのブラックユーモアというわけです。このセンスには私たちも脱帽です!
さて翌日はエクスカーションなのですが,ちょうど北海道を前線を伴った低気圧が通過し,朝から荒れ模様でした。従って一部予定を変更して,七飯町の施設で大沼で漁業をされている方をお招きしてお話を伺い,その現状を理解しました。一見穏やかな湖も,下流での農業用水としての利用もあって水位変動が大きいこと,今年の夏は雨が降らず水位が相当低下したこと,漁業をする上でのさまざまな問題など,貴重なお話を伺うことができました。
その後遊覧船に乗り,湖上から大沼を観察することにしました。
大沼は隣にある駒ヶ岳の山体崩壊で川がせき止められてできたものと考えられています。そして大沼という名前は,アイヌ語の「ポロト」(ポロ=大きい,ト=湖・沼)を訳したものだそう。日高山脈にある日本百名山の幌尻(ぽろしり)岳がアイヌ語の大きい(ポロ)山(シリ)というのは知っていたので,なるほど,と思いました。
船が湖上を進むと直径10メートルほどの小さな島がたくさんあるのが見えるのですが,これは駒ヶ岳から転がってきた岩の名残なのだそうです。こんな大きなものがゴロゴロと転がってくるなんて,想像するだけでも恐ろしいですが,今ではこれが大沼を特徴づける景色になっています。
大沼に接して小沼というのがあり,その境目を鉄道(JR函館本線)と道路が橋で渡っているのですが,ちょうどその橋の下をくぐって大沼に戻ろうとしたとき,貨物列車が通過していきました。東京の隅田川駅から札幌貨物ターミナル駅に向かう列車でしょう。宅配便の荷物もたくさん積まれているようでした。こんな偶然にびっくり!
遊覧船を降りてエクスカーション自体はこれで終了となりましたが,送迎用のバスで函館駅などに向かい途中,時間に余裕があるとのことで七飯町の道の駅に立ち寄ることになりました。七飯町と言っても知っている人は少ないかもしれませんが,じゃがいもの「男爵いも」の発祥の地であり,西洋りんごが初めて栽培された地でもあるのだそうです。私たちにとって身近な食べ物が2つも「初めて」なんてすごいですね。それもあって道の駅には「男爵ラウンジ」という立派な施設も併設されていました!
これですべての行程が終了し,私はまた新幹線で名古屋に戻りました。
今回発表を行って,もちろん反省点もありましたが,発表した研究の意義についてはみなさん好意的に受け止めてくださったと感じています。そういう意味でいい刺激になった学会発表でした。