前回に引き続いて,高山地帯に生育する植物のお話をしましょう。
ひとくちに高山植物と言ってもたくさんの種がありますが,その花の可憐さで代表格と言えるのが下の写真のコマクサです。「コマ」は駒,つまり馬の意味で,花の形が馬の顔の形に似ているから名づけられました。このような形の花は他になく,簡単に見分けることができます。梅雨の終わり頃が花の見頃にように思っていましたが,今年は全体的に生育が遅れているのかもしれません。
さてこの植物は,写真からもわかるように,砂や石ころだらけの荒れた場所に生育します。実った種子は,石などに当たって表面に傷がつかないと発芽しないと聞いたことがあります。水や養分が乏しく,他の植物が入れない厳しい環境で生育できる戦略があるのでしょう。
今回私が訪ねた北アルプス唐松岳(からまつだけ, 標高 2696 m)から五竜岳(ごりゅうだけ, 標高 2814 m)の尾根には何ヶ所かコマクサの群落地がありました。下の写真もその一つ。やせた尾根筋にたくさんの花を咲かせていました。
ちなみにこの群落地付近の登山道はこんな感じです。
切り立った崖をなぞるような道を,設置された鎖を頼りに進んでいくスリリングな区間です。写真奥が五竜岳の山塊,左側に見える白いものは残雪です。8月に入ってもまだ雪が残っていますが,9月の終わりには初雪が降ります。このように高山では,植物が生育できる期間は非常に短く,大急ぎで成長して花を咲かせ,実をつけるのです。
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