前回に引き続き,北アルプスに登った時の話をしていきましょう。今日はその二日目の様子です。
実は一日目に小屋に着いた時,一つ気がかりなことが発生していました。名古屋を出る時は晴れだった二日目の予報が,雨に変わっていたのです。実際,目が覚めた午前3時にはしっかりと雨が降り始めてしまいました。朝食を食べながらこのまま進むべきか撤退すべきか迷いましたが,ひとまず小屋から45分程で行ける奥穂高岳を目指すことにしました。
出発は午前5時。雨だけでなく風も吹いています。まだ真っ暗な中,ヘッドライトの明かりを頼りに岩場を登っていきます。このコンディションですから,周りに人影もありません。6時前に山頂に着いた時には明るくなっていたものの,霧で何も見えず…それどころか一時的に雨が雪に変わり,吹雪(!)となりました。
↑ ここが日本で3番目に高い場所です
ここでもまた撤退するかどうか迷うのですが,これから前穂高岳方面に向かうという人たちと合流し,単独登山者×5 の即席パーティで行動することにしました。この先の前穂高岳までの道は岩場続きで,霧で視界が悪い上に雨で滑りやすく危険が伴います。しかしお互い見ず知らずでも複数で行動することで注意力を高めることができました。
↑ 鎖を使って急降下しています
↑ 「崖っぷち」です!
ようやく最後の目的地,前穂高岳に着きました。一時的に霧が切れたものの,頂上からの「眺め」はこれがせいぜい。中央の雲の下には,一日目にここを見上げた上高地があります。しかし,この後上高地に着くまでずっと雨が降り続き,景色を楽しむことはできませんでした。
前穂高岳頂上はこんな殺風景な場所です。でも敢えて紹介したのは,ここで北アルプスの隆起を調査する,というニュースがあったからです。
国土地理院「日本アルプスでのGNSS観測を実施予定」
これを見ると,私が登った前日まで調査をしていたようですが,それはともかくも,本州中部地方の隆起が,私たちの住む濃尾平野や大学のある丘陵地の地質の形成に大きく関わっている,という話を聞いたことがあります。
例えば八竜湿地は粘土層と砂礫(細かい石や砂)層の間から水が湧き出しているのですが,粘土も砂礫も上流部(山地)の風化作用でできた岩や石が川で運ばれてきたものです。ということは,風化作用が続けばやがて山は消え,下流部での堆積もなくなるはずですね。しかしそれが延々と続いたのは,山地がどんどん隆起したからなのだとか。
天候の急な悪化で少々残念な山登りでしたが,野生の動物たちに遭ったり,あるいは湿地の成り立ちについて考えてみたりと,よい機会となりました。
すでに 3000 m 級の山々は長い冬に入ってしまい,次に登るには来年まで待たなければいけませんが,みなさんも機会があればぜひ訪れてみてください。雄大な自然に触れることで,何か「発見」があるはずです。
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