先日KSCで八竜湿地を見学しました。八竜湿地は砂れき層という砂や石で構成される地層が崩れてできたものと考えられていますが,その砂や石は,大昔に本州内陸部から川の流れに乗ってやってきたものです。では,どのように砂や石は供給されているのでしょうか?
その研究をしているのが,八竜湿地の流量調査でお世話になっている信州大学の福山先生です。福山先生は天竜川の支流,長野県飯島町にある与田切川(よだぎりがわ)で,土砂の流出速度の測定などの調査をされています。その研究の一端を見る機会がありましたので,今回はそのお話をしましょう。
まずは下の写真をご覧ください。ここは中央アルプスの擂鉢窪(すりばちくぼ)という場所です。福山先生が調査をしている与田切川水系の最上流部の一つです。なだらかな,まさにすり鉢状に傾斜したこの土地は,何万年前にここにあった氷河が作り出した「カール」と呼ばれる地形です。今はもちろん氷河はなく,奥には赤い屋根の山小屋があって,のんびりとした落ち着きが感じられますね。
晴れた日にお散歩したくなるようなところです
ところが,あんまり落ち着いてもいられないのですよ。別の角度から見てみましょう。ここは山が崩壊している真っ最中なのです。右に見える山小屋の大きさと比べてみてください!
かなり激しく崩れています!
また別の角度から見てみると,この山小屋がかなり危機的な状況にあることがわかるでしょう。
小屋に崩壊の魔の手が!!!
なんか怖いですね! さらに,上の写真の小屋の向こう側には,壁のようになっている絶壁がありますが,これの大きさも半端ないんです! 絶壁の全体像はこうなります。
山一つごっそり崩れてます!
このような大規模な崩壊は,台風などの大雨でどんどん進行していくように思えますが,福山先生のお話しによれば,凍結融解といって,岩盤の割れ目などにしみ込んだ水が冬場に凍り,気温が上がって融けることによって生じる崩壊もかなりの割合を占めるのだそうです。
表題の「動かざること山の如し」は,武田信玄の風林火山としておなじみなものですが,上の写真から,条件によって山はかなり大規模に「動く」ことがわかります。流出した土砂は災害の原因になることもあるのですが,この土砂が運ばれることによって平野が作られたり,海まで運ばれて砂浜の材料になったりするのです。
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