昨日の新聞に,大気中の二酸化炭素濃度が初めて400 ppm を超えた,という記事がありました。この二酸化炭素濃度については,ちょっとした思い出があります。
10年以上前,私が大学院の博士課程に在籍していた時のこと。
酸性雨と同様,大気汚染物質から発生する酸性霧(さんせいぎり)が,樹木にどのような影響を及ぼすのかを私は研究していました。ビニールハウス内でモミの苗木を育て,自分で調製した酸性霧を噴霧し,光合成や蒸散の速度を測っていました。
当時の実験の様子です
ビニールハウス内にモミの苗木を
200本(!)育てていました。
光合成や蒸散を測る,といっても「携帯型光合成蒸散測定装置」という便利な機械があるのです。「キュベット」と呼ばれる装置で葉をはさみ,本体から一定濃度の二酸化炭素を含む空気を送り込み,葉を通過した空気をまた本体に戻してその二酸化炭素濃度を測定します。濃度が低下した分が光合成で消費された二酸化炭素とみなすことができ,光合成の速度が計算できる,という仕組みです。
余談ながらモミの木は針葉樹なので,このキュベットも針葉樹用のものが必要でした。あるとき不具合が起きて輸入代理店に電話し,「モデル番号は〇〇で,シリアル番号は・・・」と言おうとしたら,担当の方が
いえいえ,わかりますよ
その型のキュベットは日本に
一台しかないですから
それ以来とっても丁寧な扱いとなったのは言うまでもありません(苦笑)
それはさておき,この装置をかつて使っていたという,当時すでに定年間際の先生が私の実験を見に来たことがありました。私が測定前の設定で二酸化炭素濃度を370 ppm と入力すると
今はそんなに高いのか!
ワシがむかし実験していたころは
300 ppmで測定していたのに!
もちろん,大気中の二酸化炭素濃度が上昇傾向にあることは知っていました。しかし,この時の会話ほど「実感として」思ったことはありませんでした。
そして 400 ppm
あの会話から10年ちょっとでこれです。もし同じ場面があったら,今度は私が
僕がむかし実験していたころは・・・
と言うことになるでしょうね。これほど早い時間スケールでの変化が今後どうなっていくのかはわかりませんが,やはり気がかりです。
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