先日私は信州大学農学部に行ってきました。信大農学部は長野県南部の伊那谷にあり,東の南アルプス,西の中央アルプスを仰ぐ自然の豊かな場所です。この大学にお勤めで,八竜湿地の流量調査で共同研究をしている福山先生を今回訪ね,先生の研究のフィールドを見学させていただいたのです。そのうち今回は,南アルプスの山麓地域での見学について紹介します。
最初に訪れたのは信大農学部の付属演習林のひとつ,手良沢山(てらさわやま)ステーションです。演習林内に川が流れていて,流量堰が設置してありました。原理は福山先生と私が八竜湿地に設置したものと同じですが,規模が大きく,コンクリートとステンレス鋼板による頑丈な作りです。
福山先生はここで,川の水のにごりを観測しているのだそうです。普段は澄んだ水が流れていても,雨が降ると水がにごりますね。それは砂や石が流されるからで,にごりから土砂がどれだけ流れるのか,評価しようとする研究です。
続いて訪れたのは,天竜川の支流である三峰川(みぶがわ)流域地域です。下の写真はカラマツの人工林で,大きく育ったカラマツの林床(森の中の地表面)にほとんど植物が生えていないのがわかります。これは,人工林の手入れが行き届いて植物を刈り取ったから,ではなく,増えたシカが植物を食べ尽くしたからなのです。
びっくりするくらいスカスカです (>_<)
もちろんこれは喜べる状態ではありません。
いま南アルプス地域では,シカが増えすぎて大問題となっているのです。シカが嫌う植物しか残らず,生態系のバランスが大きく崩れてしまいます。希少な植物が食べられて絶滅してしまうかもしれません。また地面の植物がなくなることで,山から土砂が流れやすくなってしまいます。そのためさまざまな対策とともに研究が行われていて,福山先生もシカと土砂の流出の関係を研究しようとしている一人なのです。
そのような地域の課題を教えてもらいつつフィールドを案内していただいたのですが,心が和む風景にも出会うことができました。一番の盛りは過ぎていましたが,川べりのあちこちでコナシの花が咲いていました。コナシは八竜湿地にも生育している樹木で,清楚な花が愛らしく,わたくしの好きな植物の一つです。
見学を一通り終えて,峠道を超えたらこんな景色が。赤く染まり始めた空を,水を引いたばかりの田んぼが鏡のように映しています。信州らしい穏やかな光景です。落ち着きますね~。
次回は伊那谷の西側,中央アルプスの麓での見学について書きます。
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